MBWA (Management by Walking Around)とは?
MBWA(Management by Walking Around)は、経営やリーダーシップにおいて活用されるシンプルかつ効果的な手法です。トップマネジメントやマネージャーが日常的にオフィスや現場を歩き回り、従業員と直接対話を行うことで、現場の状況を把握し、信頼関係を構築することを目的としています。この手法は、特に柔軟性や迅速な問題解決が求められる組織で効果を発揮します。
MBWAの基本的な概要
経営者が歩き回る意義
MBWAでは、管理者が「現場に足を運ぶ」ことが重要視されます。これは、デスクや会議室に閉じこもるのではなく、従業員と日常的に接触することで、以下のメリットを得られるためです。
- 現場で起きているリアルな課題を把握できる
- 従業員の声を直接聞き、改善案や意見を反映させる
- 組織全体に対する信頼感を醸成する
導入の背景
MBWAの概念は、1980年代にトム・ピーターズとロバート・ウォーターマンの著書『エクセレンスへの探求』で広められました。この手法は、特にイノベーションを促進し、効率性を高める経営手法として注目されました。
MBWAの具体的な実践方法
1. 定期的に現場を訪れる
マネージャーはスケジュールを設定し、定期的に現場を歩き回る時間を確保するべきです。重要なのは「訪問を目的化しない」ことです。むしろ自然なコミュニケーションを通じて現場の信頼を得ることが目指されます。
2. 従業員とのオープンな対話
MBWAの核は対話にあります。従業員に質問し、意見を聞くことで、現場の隠れた課題を引き出すことができます。例えば:
- 「最近の仕事で難しいと感じていることは何か?」
- 「改善できる部分があるとしたらどこだと思う?」
3. 観察による気づき
現場での観察を通じて、書類やデータだけでは見えない課題や改善ポイントを発見します。たとえば、作業の流れやコミュニケーションの問題など、現場でしか分からない実態を把握します。
MBWAのメリットと課題
メリット
- 従業員のモチベーション向上
現場で直接話すことで、従業員は自分の意見が重要だと感じ、やる気が向上します。 - 問題解決の迅速化
早期に課題を察知し、解決策を打ち出せるため、全体的な生産性が向上します。 - 組織文化の改善
透明性や信頼が生まれることで、ポジティブな組織文化が育まれます。
課題
- 時間の確保
多忙なスケジュールの中で、現場に足を運ぶ時間をどのように確保するかが課題です。 - 信頼の構築
最初は従業員が「視察」と捉え、警戒する場合があります。そのため、継続的かつ自然な接触が必要です。
MBWAを活用する際の注意点
1. トップダウンではなくフラットな姿勢
従業員に「指示を与える」だけではなく、あくまで対話と観察を重視することが求められます。
2. 改善行動の実施
現場で得たフィードバックをもとに具体的な改善策を実行することが重要です。従業員はその結果を見て、信頼を高めることができます。
3. バランスを保つ
過度に現場に介入すると、逆に業務の効率を阻害する可能性があります。適切な頻度で行うことが鍵です。
MBWAの事例
- 製造業の現場改善
ある製造業では、現場の労働環境に課題があると感じた管理者がMBWAを導入しました。作業効率が悪い原因を直接観察し、従業員と話し合った結果、作業台の高さを調整するだけで効率が20%向上しました。 - IT企業のコミュニケーション活性化
IT企業でMBWAを実践したマネージャーは、従業員のストレスや懸念事項を早期に察知し、結果的に離職率を大幅に低下させました。
図表:MBWAの流れ
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
現場訪問 | 現場を定期的に訪れる | フラットな姿勢で自然な会話を行う |
観察 | 現場での様子を把握 | 見えない課題や問題点を発見する |
フィードバック | 改善案を元に具体的な行動を実施 | 従業員の声を反映し、信頼を構築する |
MBWAが有効な場面
- 柔軟な対応が必要な現場
製造業やIT企業など、現場の状況が常に変化する環境。 - 組織の透明性を高めたい場合
従業員との対話を通じて、組織全体の透明性を向上。