NRR (Net Revenue Retention)とは
NRR(Net Revenue Retention、ネット収益維持率)は、主にサブスクリプション型ビジネスやSaaS企業で利用される重要な指標です。この指標は、既存顧客から得られる収益が時間の経過とともにどのように変化するかを測定します。顧客の維持、アップセル、クロスセルの成果を示し、ビジネスの成長性や安定性を評価するために欠かせないものです。
NRRの計算方法とその構成要素
計算式
NRRは以下の計算式で求められます。
NRR=期初収益 + アップセル収益 – チャーン収益期初収益×100\text{NRR} = \frac{\text{期初収益 + アップセル収益 – チャーン収益}}{\text{期初収益}} \times 100NRR=期初収益期初収益 + アップセル収益 – チャーン収益×100
- 期初収益: ある期間の開始時点での既存顧客からの総収益
- アップセル収益: 既存顧客が契約を拡張、アップグレードしたことによる追加収益
- チャーン収益: 既存顧客が契約を減額または解約したことによる収益減少
具体例
例えば、期初収益が1,000万円で、アップセルにより200万円の追加収益が発生し、チャーンによって100万円の収益が失われた場合、NRRは次のように計算されます。
NRR=1,000+200−1001,000×100=110%\text{NRR} = \frac{1,000 + 200 – 100}{1,000} \times 100 = 110\%NRR=1,0001,000+200−100×100=110%
この場合、既存顧客からの収益は10%増加していることを示します。
NRRが示す意味
高いNRRが意味するもの
NRRが100%以上の場合、既存顧客基盤が新規顧客の追加なしでも成長していることを意味します。これは、アップセルやクロスセル戦略が成功している証拠であり、安定した収益基盤を持つビジネスの特徴です。
低いNRRのリスク
一方、NRRが100%未満の場合、顧客の減少や収益減少がアップセルを上回っている可能性を示します。特に、NRRが著しく低い場合、ビジネスモデルや顧客サポートの改善が求められます。
NRRの活用方法
成長戦略の評価
NRRは、既存顧客基盤がどれだけ効果的に活用されているかを評価するための指標です。これにより、以下のような戦略の成否を測定できます。
- アップセル・クロスセル戦略
- 顧客維持プログラム
業績予測
高いNRRを維持している企業は、新規顧客の獲得に依存せずに収益を拡大できます。これにより、より正確な財務計画や成長予測が可能になります。
NRRのメリットと課題
メリット
- 顧客基盤の成長を視覚化: 成長が既存顧客に依存しているかを数値化。
- 収益安定性の指標: サブスクリプション型ビジネスにおける持続可能性を評価。
- 長期的な顧客価値の測定: CLV(顧客生涯価値)との関連性が高い。
課題
- 新規顧客の影響を含まない: NRRは既存顧客のみに焦点を当てているため、新規顧客の成長が速い企業では全体の状況を反映しにくい。
- 計算データの精度: アップセルやチャーンの詳細なデータが必要。
図表で見るNRRのイメージ
以下は、NRRの計算要素を視覚的に示す図の例です。
指標 | 金額(円) | 説明 |
---|---|---|
期初収益 | 1,000,000 | 初期の既存顧客収益 |
アップセル収益 | 200,000 | 追加購入や契約拡張収益 |
チャーン収益 | -100,000 | 契約解約や減額収益 |
最終収益 | 1,100,000 | NRR計算の基準値 |