QPSK (Quadrature Phase Shift Keying)とは
QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)は、デジタル信号を効率的に伝送するための変調方式の一つです。この方式は、特に無線通信や衛星通信、モバイルネットワークで広く利用されています。QPSKは信号の位相を用いてデータを表現することで、高いスペクトル効率を実現します。
QPSKの基本原理
QPSKは位相変調の一種であり、デジタルデータを4つの異なる位相状態(通常は0°, 90°, 180°, 270°)にマッピングします。これにより、1シンボルあたり2ビットの情報を伝達することが可能です。
- ビットのマッピング
デジタルデータは、2ビットの組み合わせ(00, 01, 10, 11)として解釈され、それぞれの組み合わせが特定の位相に対応します。例えば、- 00 → 0°
- 01 → 90°
- 10 → 180°
- 11 → 270°
- I軸とQ軸
QPSKでは信号をI軸(In-phase)とQ軸(Quadrature-phase)の直交する2つの成分に分解します。これにより、効率的かつ安定した信号伝送が可能となります。
QPSKの利点
- スペクトル効率が高い
QPSKは、同じ帯域幅でBPSK(Binary Phase Shift Keying)よりも2倍のデータを送信できます。これにより、限られた周波数帯域を効果的に利用できます。 - 耐ノイズ性能
QPSKはノイズや干渉に強い設計となっており、特に高いデータレートが必要な無線通信環境で有利です。 - 広範な応用
QPSKは、携帯電話ネットワーク(例: LTE)、Wi-Fi、衛星通信、ケーブルテレビ(CATV)のインフラなど、さまざまな用途で利用されています。
QPSKの課題と対応策
- 高精度な同期が必要
位相を用いるため、送信機と受信機間での正確な同期が求められます。不適切な同期はデータエラーの原因となります。 - 複雑な受信処理
QPSK信号を正確に復調するには、高度な信号処理技術が必要です。これを解決するため、現代の通信システムではデジタル信号処理(DSP)技術が活用されています。 - 干渉やマルチパス問題
無線環境では信号の干渉やマルチパス(反射などで複数の経路を通る信号)の影響を受けやすいですが、MIMO(多入力多出力)技術などの進化により克服されています。
図解:QPSKの信号マッピング
以下はQPSKの信号空間図(コンスタレーション図)の例です。4つの位相状態が円状に配置され、それぞれがデジタルデータ(ビットペア)を表しています。
Q (90°)
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11 | 01
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-----------|----------- I (0°)
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10 | 00
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-Q