SAML(Security Assertion Markup Language)とは
SAML(Security Assertion Markup Language)は、異なるシステム間で安全かつ効率的に認証情報を共有するためのXMLベースの標準仕様です。主にWebサービスやクラウドアプリケーションにおいて、ユーザーが一度ログインするだけで複数のシステムやサービスを利用できる仕組み(シングルサインオン:SSO)を実現するために使用されます。
SAMLの仕組みと基本要素
SAMLが解決する課題
従来、ユーザーが各サービスにアクセスするたびに個別のIDとパスワードを入力する必要がありました。この状況は、以下のような課題を生んでいました。
- ユーザーの負担が増える
- ID管理が複雑化し、セキュリティリスクが高まる
- 管理者の運用負担が増加
SAMLを利用することで、これらの課題を解決し、認証の効率化とセキュリティ強化を実現します。
基本要素
SAMLは以下の3つの重要な要素で構成されています。
- アイデンティティプロバイダー(IdP) ユーザーの認証を行い、その結果を他のシステムに伝える役割を持つシステムです。例えば、企業のディレクトリサービス(Active Directoryなど)が該当します。
- サービスプロバイダー(SP) 認証されたユーザーにサービスを提供するシステムです。例えば、クラウドアプリケーション(Google WorkspaceやSalesforceなど)です。
- SAMLアサーション IdPがSPに送信する認証情報のことです。これにより、ユーザーが正しく認証されていることを証明します。
SAMLの動作プロセス
SAMLの基本的な動作プロセスは以下の通りです。
- ユーザーがサービスにアクセスを要求 ユーザーがSPにアクセスすると、SPはIdPに認証を要求します。
- IdPによる認証 IdPがユーザーの認証を行います。認証に成功すると、SAMLアサーションを生成します。
- SAMLアサーションの送信 IdPが生成したSAMLアサーションをSPに送信します。
- SPによる認証結果の確認 SPは受け取ったSAMLアサーションを確認し、正しい場合はユーザーにサービスへのアクセスを許可します。
このプロセスにより、ユーザーは一度のログインで複数のサービスを利用できるようになります。
SAMLを利用するメリット
ユーザーの利便性向上
SAMLを利用することで、一度のログインで複数のシステムやサービスを利用可能になります。これにより、パスワードを何度も入力する手間が省けます。
セキュリティの強化
- 認証情報の一元管理:認証情報をIdPに集中管理することで、セキュリティリスクを低減できます。
- パスワードの漏洩リスク軽減:SP側にパスワードを保存する必要がないため、パスワード漏洩のリスクが減ります。
運用コストの削減
ID管理の負担が軽減されることで、IT管理者の作業効率が向上します。
SAMLと他の認証技術との違い
SAMLはOAuthやOpenID Connectといった他の認証技術と比較されることが多いです。以下はその違いです。
項目 | SAML | OAuth/OpenID Connect |
---|---|---|
用途 | 認証に特化 | 認証・認可の両方をカバー |
対象 | 主に企業向け(エンタープライズ用途) | モバイルアプリや個人向けサービスにも対応 |
プロトコル形式 | XMLベース | JSONベース |
SAMLの活用事例
- 企業のシングルサインオン SAMLを利用して、従業員が企業内の複数のアプリケーションにシームレスにアクセスできる環境を構築します。
- クラウドサービスの統合 Google WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウドサービスと社内システムを連携させ、統一された認証基盤を提供します。
- B2Bパートナーシップ 異なる企業間でのシステム連携において、共通の認証基盤としてSAMLを利用します。