WAR (Weighted Average Return) とは?
WAR(Weighted Average Return)は、日本語では「加重平均収益率」と訳され、複数の投資対象や資産の収益率を、それぞれの投資額や割合に基づいて計算した平均収益率のことです。この指標は、ポートフォリオの全体的なパフォーマンスを評価するために用いられ、特にファイナンス分野で多く活用されています。異なるリスクやリターン特性を持つ投資の全体像を把握できるという点で、投資判断における重要な指標となっています。
1. WARの基本的な計算方法
WARを計算するためには、各投資対象の収益率と、それぞれの投資額(または割合)が必要です。以下は基本的な計算式です。
計算式:
WAR=∑(収益率×投資割合)∑投資割合\text{WAR} = \frac{\sum (収益率 \times 投資割合)}{\sum 投資割合}WAR=∑投資割合∑(収益率×投資割合)
- 収益率:各投資対象から得られるリターンの割合
- 投資割合:各投資対象に割り当てた資金の比率
例:
以下の投資対象があるとします
- 投資A:収益率5%、割合50%
- 投資B:収益率8%、割合30%
- 投資C:収益率3%、割合20%
WARの計算:
WAR=(5%×50%)+(8%×30%)+(3%×20%)\text{WAR} = (5\% \times 50\%) + (8\% \times 30\%) + (3\% \times 20\%)WAR=(5%×50%)+(8%×30%)+(3%×20%)
WAR=2.5%+2.4%+0.6%=5.5%\text{WAR} = 2.5\% + 2.4\% + 0.6\% = 5.5\%WAR=2.5%+2.4%+0.6%=5.5%
この場合、ポートフォリオ全体の加重平均収益率は5.5%です。
2. WARの利点
ポートフォリオ全体のパフォーマンスを把握
WARは、複数の投資対象を含むポートフォリオの全体的な収益率を簡潔に表します。これにより、全体的なリスクとリターンのバランスを考慮した投資判断が可能となります。
リスク分散の効果を評価
異なるリスクレベルを持つ資産を組み合わせた場合、それぞれの資産の寄与度をWARで把握することで、分散投資の効果を定量的に確認できます。
投資配分の調整に活用可能
特定の資産がポートフォリオ全体に与える影響をWARから分析できるため、必要に応じて投資割合を見直す判断が可能です。
3. WARを活用する場面
資産運用や投資管理
投資信託やヘッジファンドなどのポートフォリオマネージャーが、ポートフォリオの収益性を評価し、最適な配分を検討する際にWARが利用されます。
企業の事業評価
企業が複数の事業部門を抱える場合、各事業の収益率を加重平均して全体のパフォーマンスを評価するのにもWARが役立ちます。
プロジェクト投資の評価
異なる投資プロジェクトを比較し、全体のROI(投資利益率)を計算する際にWARが活用されます。
4. WARを理解する上での注意点
リスク要因の見落とし
WARは収益率の平均を計算する指標であるため、リスク(標準偏差やボラティリティ)を直接考慮していません。補完的に他の指標(例:シャープレシオ)を使用する必要があります。
分母の重要性
分母となる投資割合が正確であることがWARの正確性に直結します。誤った割合を使用すると、誤解を招く結果となる可能性があります。
5. WARと他の類似指標の違い
- 単純平均収益率:WARは加重平均を用いるため、投資割合の違いを反映しています。一方、単純平均収益率は各収益率を均等に扱うため、結果が大きく異なる場合があります。
- リスク調整後収益率:WARはリスクを考慮しない点で、リスク調整後収益率(例:シャープレシオ)と異なります。
6. 図:WARの計算イメージ
投資対象 | 収益率 | 投資割合 | 加重収益率 |
---|---|---|---|
A | 5% | 50% | 2.5% |
B | 8% | 30% | 2.4% |
C | 3% | 20% | 0.6% |
合計 | – | 100% | 5.5% |