Partial Goodwill Method(部分のれん方式)とは
**Partial Goodwill Method(部分のれん方式)**は、企業合併や買収(M&A)において、買収側が持分を取得した際の「のれん(Goodwill)」を計算する手法の一つです。この方式では、のれんを買収された企業全体の価値ではなく、買収側が取得した持分の割合に基づいて計算します。部分のれん方式は、完全のれん方式(Full Goodwill Method)と対比される概念です。
部分のれん方式の基本概念
のれん(Goodwill)とは
のれんは、買収価格が買収対象企業の純資産(簿価ベース)を超える部分を指します。この超過分は、ブランド価値、顧客関係、特許、または市場の優位性といった無形資産に起因します。
のれんの計算における2つのアプローチ
- 完全のれん方式:買収された企業全体の公正価値をもとにのれんを計算します。
- 部分のれん方式:買収側が取得した持分に応じた公正価値をもとにのれんを計算します。
部分のれん方式では、買収されなかった非支配持分については、公正価値ではなく純資産ベースで評価されます。
部分のれん方式の具体例
計算例
企業Aが企業Bを買収するケースを想定します。
- 企業Bの純資産の簿価:1,000万円
- 企業Bの公正価値:1,200万円
- 企業Aが取得した持分:60%
- 買収価格:800万円
のれん計算
- 取得した持分の公正価値:1,200万円 × 60% = 720万円
- 買収価格との差額:800万円 – 720万円 = 80万円
この80万円がのれんとなります。
非支配持分(残りの40%)は簿価ベースで計算されるため、1,000万円 × 40% = 400万円となります。
部分のれん方式の特徴とメリット
特徴
- 簡易性:のれんを買収した持分に限定して計算するため、計算が簡単です。
- 保守的な評価:非支配持分を簿価で評価するため、全体価値を過大評価するリスクが軽減されます。
メリット
部分のれん方式の課題と注意点
課題
- 公正価値の不完全性:非支配持分を純資産ベースで評価するため、企業全体の公正価値が正確に反映されない可能性があります。
- 国際基準との整合性:一部の会計基準では完全のれん方式が推奨されるため、部分のれん方式を使用すると整合性に問題が生じる可能性があります。
注意点
- 投資家や利害関係者にとって、のれん計算の基準が理解しづらい場合があります。
- 非支配持分の扱いが国や基準ごとに異なる点に留意する必要があります。
図解:部分のれん方式の仕組み
部分のれん方式の計算フロー
純資産の簿価 -> 公正価値(買収持分) -> 買収価格との差額 = のれん